トップページ >> 森本洋司杜氏インタビュー

09年10月に仕込んだ吟醸酒の呑み切りの日。森本杜氏は「丸みがあって、吟醸香がプンとしている。きれいな酒だ」と満足げに語った。森本洋司(もりもと・ひろし)杜氏、70歳。兵庫・養父市出身の南但杜氏だ。農業を営む傍らで蔵人としても働く父親の影響で18歳のときから酒造りの世界に入った。「やるからに杜氏になりたい」。その思いから48歳で念願の杜氏となり、22年間、地元や和歌山、四国などの銘醸蔵の経験を積み杜氏としての評価を得てきた。01年から蔵人頭として純米酒造りに従事した3年間の実績が評価され、08年、玉乃光酒造に招かれた。2年目からは杜氏として、玉乃光の酒造りに取り組んでいる。
その成果はすぐに表れた。全国新酒鑑評会では、平成20酒造年度で5年ぶりに入賞。翌21年度も入賞し、2年連続で入賞している。審査員からは「昔(15年度に金賞受賞)の玉乃光本来の味に戻った」と高い評価を受けている。
森本杜氏は、玉乃光酒造の招きに応じた理由を「いい酒、アル添酒ではなく純米酒を造りたかったから」と語る。玉乃光酒造では「アル添酒」主流の64年(昭和39年)に、業界に先駆けて米100%の酒(純米清酒「無添加清酒」)を復活させた。
さらに、国産最高級の備前雄町や播州山田錦、それに地元京都産祝(いわい)などの酒米をふんだんに使い、純米大吟醸や純米吟醸の純米酒造りに徹している。玉乃光で使用する備前雄町は、岡山県の契約農家で徹底管理され、生産されている。森本杜氏は「宇治田福時会長の酒造りに対する強いこだわり。雄町は普通の酒屋では扱えない酒米の王様。その期待に応えたい」と意気込む。
森本杜氏は、玉乃光酒造の招きに応じた理由を「いい酒、アル添酒ではなく純米酒を造りたかったから」と語る。玉乃光酒造では「アル添酒」主流の64年(昭和39年)に、業界に先駆けて米100%の酒(純米清酒「無添加清酒」)を復活させた。
さらに、国産最高級の備前雄町や播州山田錦、それに地元京都産祝(いわい)などの酒米をふんだんに使い、純米大吟醸や純米吟醸の純米酒造りに徹している。玉乃光で使用する備前雄町は、岡山県の契約農家で徹底管理され、生産されている。森本杜氏は「宇治田福時会長の酒造りに対する強いこだわり。雄町は普通の酒屋では扱えない酒米の王様。その期待に応えたい」と意気込む。

水にもこだわりをみせている。灘の男酒、伏見の女酒に代表される京都市伏見区は京都水盆といわれ、琵琶湖211億トンに匹敵する水脈がある。造り酒屋約30軒が軒を連ね庶民生活に密接な関係がある伏見区では、今も区内のあちこちで水がわき出ている。灘の硬水とは違い、飲むと柔らかく、口当たりがよい硬度3の軟水は〝伏水〟と呼ばれ、近隣住民だけでなく遠方からもくみにやってくる名水だ。玉乃光酒造では地下150~200mからくみ上げ、仕込み水はもちろん、洗米、たるの洗浄に至るまですべて〝伏水〟を使用している。「米は洗うと30%の水を吸う。すべてにおいて豊富な水を使える環境は酒造りに最適」と喜ぶ。
だが、米と水だけで造る純米酒造りは、杜氏の力量が問われる。森本杜氏は「杜氏の仕事は酒蔵のイメージする酒を忠実に再現すること」。そのために「けがしない、丈夫な酒を造りたい」と話す。丈夫な酒とは。酒造りはよく赤子を育てることに例えられる。丈夫な子供を育てるためには時間と手間を惜しまない親心と同じ。愛情を持って育てていくしかない。
そんな森本杜氏のモットーは「和」。「データを取ったり機械化は大事。しかし、大吟醸は機械では出来ない」と言う。子育てと同じ。しかもひとりでは育てられないという。今年も10月14日に蔵人7人と供に玉乃光に蔵入りする。「寝食を供にし、杜氏の意図することを分かってくれる経験豊富な蔵人が必要。本当のいい酒を造るにはそんな人の「和」が必要。「和」がないと絶対いい酒は出来ない」と言い切る。さらに、「健康が一番。自分や蔵人だけではない。仕込みが終わって蔵人の帰りを待つ家族も同じ。皆が健康であること」と話す。仕込みの過程では紙一重の作業が求められる。細心の注意が必要な酒造りで、心配事があると酒造りに集中出来なくなるという。もう一つの「和」家族だ。

また、森本杜氏は数少ない〝酒造り唄〟の伝承者でもある。アル添酒が増え、機械化が進み始めた昭和期30年代ころから酒蔵では聞かれなくなった。酒造り唄は、酒造工程でうたわれる作業唄の総称で、唄を同じ調子で歌うことによって時計代わりに作業時間を一定にしていた。森本杜氏は「今でも仕込みの全行程が終わったときは、ありがとうの意味合いで歌いますよ」と自慢の声を張る。「なんとぉ~、皆ささ~ん。出来たよじゃないか~。仕事かわりい~て、またぁ~、たぁのむよぉ~」。皆で歌うことによって連帯感もいっそう強くなる。これも「和」。最近では酒造りの伝統を守りたいという若い蔵人が森本杜氏のもとを訪れるという。
最後に杜氏としての喜びは?
「酒造り自体は最後の絞り〝皆造(かいぞう)〟で終わり、それぞれの故郷に帰っていく。しかし帰った後も酒タンクがどれだけ空いているかが気になる。空いていれば飲まれているということ。娘の嫁入りみたいなものですよ」と笑顔で応えた。
「酒造り自体は最後の絞り〝皆造(かいぞう)〟で終わり、それぞれの故郷に帰っていく。しかし帰った後も酒タンクがどれだけ空いているかが気になる。空いていれば飲まれているということ。娘の嫁入りみたいなものですよ」と笑顔で応えた。

